徳島・三好市 田舎暮らしを体感
滞在型観光 集客力を強化
【徳島】徳島県三好市は東祖谷地区で、古民家を活用した宿泊施設を増やす。従来3棟で観光客を受入れてきたが、来春までに全8棟にする。かやぶき屋根など古民家の雰囲気を楽しみながら、床暖房やオール電化キッチンなど快適な環境で宿泊できる。同地区は山あいに昔ながらの集落が残る風景が観光客の間で人気があり、田舎暮らしを体感できる滞在型観光の集客力を強化する。
宿泊施設がある三好市東祖谷地区の落合集落は、2005年に国の重要伝統的建造物群保存地区の指定を受けた。高低差300メートルの急斜面地に江戸時代中期から昭和初期に建てられた古民家が点在。古民家を保存しながら観光資源として活用し、過疎化が進む地域の活性化につなげるのが宿泊施設の狙いだ。
このほど営業を始めた新設の「雲外」「蒼天(そうてん)」の2棟は、ともに定員が5人。面積はそれぞれ85平方メートル、64平方メートル。例えば「雲外」は囲炉裏にある部屋と自炊や食事ができる部屋とで構成されている。5月末に開業した「悠居」の定員は10人で面積は138平方メートル。来年春をめどにさらに2棟を開く。
新しい3棟は従来の3棟と同様、市が古民家を所有者から無償で借り、改修・維持費を負担する。
「蒼天」の場合、改修には約3千万円をかけた。運営も従来の3棟と同様、古民家を再生・保存する活動を手掛けてきた東洋文化研究家のアレックス・カー氏が理事長を努める地元のNPO法人「塵庵(ちりおり)トラスト」に委託する。
宿泊料金は雲外、蒼天で2人利用時の1人当たり料金が1万4千円(繁忙・閑散期以外の通常期)。夕食はオプションで別途料金がかかるが、ソバ打ち体験や集落内のウォーキングなどの体験プログラムも用意する。
歯応えがある小さなジャガイモの「ごうしいも」など地域の食材を使った郷土料理を住民に教わりながら自炊したり、近所の料亭から食事を運んでもらったりもできる。
降雪もある冬場に客が途絶える時期があるため、従来の3棟の13年度稼動率は4割弱の水準。だが春夏秋に人気があるため、宿泊客の受入れ能力を増やす。
三好市は12年に古民家を改修した宿泊施設を開業。13年度の利用者数は1086人。関東・関西からの利用者が半数以上を占めるほか、外国人観光客の人気も高く5.8%を占める。13年度の宿泊売上高は約1千万円。8棟が年間稼動する16年度に宿泊売上高2500万円を目指す。