141万人のケンコウ
2005年、10年と女性の平均寿命全国1位になった北中城村だが、65歳未満の死亡率、生活習慣病者の割合が高いなど、「このままでは長寿日本一が危ぶまれる」(村職員)実態がある。村は今年3月に初めて、「健康長寿のまちづくり計画」を策定、住民の健康課題を改善し、さらに産業振興につなげる取り組みに着手した。 (社会部・高崎園子)
地域1 北中城村㊦
産業振興と相乗効果も狙う
「もともとは国保の赤字をどうにかしないといけないというのが出発点だった。女性の平均寿命が日本一になったが、村民の健康実態をみると、『すぐにそうでなくなるぞ』と逆に緊張感を持った」
新垣邦男村長は、健康長寿のまちづくりに取り組むきっかけをそう話した。
村民の健康状態をみると、内臓脂肪症候群(メタボ)の割合は35.9%(2012年度)で、県平均の36.7%は下回るが、全国平均の27.2%を大きく上回っている。生活習慣病のうち脂質異常症60.1%で、”肥満県”とされる県平均の52.2%より高い。一方、特定健診受診率は35.1%で県平均の37.3%を下回る。
国民健康保険(国保)の給付額は右肩上がりで、保険料と給付額の差額が年々開き、ほかの市町村同様、赤字で、一般会計からの繰り入れが常態化しているという。
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村は昨年度、計画づくりに当たって初めて1700人を対象にした村民の意識調査を実施。また、村内の団体代表や学識経験者でつくる「プレ村民会議」を発足。アンケート結果や村民会議の意見を踏まえ、20~30年後を見据えた、健康をキーワードにしたまちづくりビジョンを描いた「計画」を作った。
計画策定には国の特定地域再生事業費補助金を利用した。
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計画には、健康づくりだけでなく、産業・観光振興との連動も盛り込んだ。職員が先進地視察で刺激を受けたことが大きい。
男性長寿日本一の長野県松川村では、米やリンゴなどの農作物や加工品を「長寿日本一」をうたって売り出し、年間5千万円の利益を生んでいた。
視察した健康保険課長の奥間かほるさんは「住民が健康であることがお金を生み、さらに健康づくりのモチベーションになる。相乗効果。逆に『2回も1番になっているのになぜアピールしないんですか』と言われました。」
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健康をキーワードにしたまちづくりビジョンはできたが、具体的な取り組みはこれから。
新垣村長は「教育や産業など、村のすべての事業に健康の視点を入れたい。財政は厳しいが、積極的に予算をつけていきたい」と
いう。
ハード面では米軍泡瀬ゴルフ場返還跡地に全大候型の体育館(サブアリーナ)の建設が決まっている。
ソフト面では、働き盛り世代の健康改善のため、商工会を通した職場での健康づくり呼び掛け、村の保健師による自治会での出前講座、企業や団体と連携した健康特産品づくりなどを計画している。
村として全庁体制で取り組むため、企画振興課に担当職員を配置、係長以上でつくる「健康づくり連絡会」もつくった。
「村の先輩たちは若いころ、食事が質素で車もなく、日常生活で鍛えられてきたから長寿だった。いま、環境は全然違う。私たちは自分たちのことを真剣に考えなければならない」 (奥間さん)
新垣村長は「時間はかかると思うが、長期ビジョンで、今、できることをしていきたい」と意気込みを語った。
2014年 6月 1日 沖縄タイムス