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若者の流出防ぐ青空市

イキイキ 地域

新潟県三条市

県庁所在地の新潟市と県第二の都市である長岡市に挟まれた新潟県三条市の「三条マルシェ」が人気だ。日祝日に中心市街地を歩行者天国にして、出店やキッチンカーを置く青空市は一見ありふれた光景にみえる。だが市民目線の運営は街中に一時のにぎわいを生み出すだけでなく、商店街への新規出店促進や若年層流出を抑える仕組みとしても注目されつつある。

2014年度で5年目の開催となった三条マルシェは5~10月にほぼ毎月、冬には1回開く。13年度は6回開催で、のべ20万8千人が来場した。このうち歩行者天国区間を1.7キロメートルに広げた13年10月の開催には、三条市の全人口に匹敵する9万8千人が集まった。

13年度の総事業費は人権費込みで1300万円。1千万円を市が助成し、300万円は市民ボランティア約40人で構成する実行委員会が出店者から徴収する出店料などでまかなう。

5月6日に開いた今年度最初の三条マルシェは2万7800人が来場した。出店79店舗は市内外の飲食、雑貨などが中心で珍しい店があるわけではない。簡易ステージを設けているが有名人は出ない。出場者希望から10分間の出演で1千円を徴収しているほどだ。

それでも人が集まるのは「ハードルが低く、交流の楽しさを前面に出しているから」と三条マルシェ実行委員長で主婦の加藤はと子さん(39)は話す。加藤さん自身、手芸用品の出店者から実行委員を経て、今年度から実行委員長になった。

 「久しぶり。なんで出ているの」「夫の姉夫婦の店の手伝いでね」_。

会場ではこんな声がちらほらと聞こえる。出店料は4千~6千円と個人でも気軽に出せる。キッチンカーで売る。プロだけでなく、腕試しを兼ねて手作り雑貨を出店する主婦や地元高校生など多様な人がくることで「にわか同窓会」を含め思いがけない交流を生む。

当日、店を開く商店街の店舗前には出店しないというルールがあり、店舗側もにぎわいが生まれることはプラスだ。同時に、マルシェは新規出店希望者が自らを試す場にもなっている。

三条市が商店街の空き店舗対策事業として12年度から始めた「創業塾ポンテキア」。資金繰りなど新規事業開発に必要なノウハウを教えるだけでなく、三条マルシェへの出店を通じた実地での市場調査を最終課題としている。同塾からは2年間で、のべ64人の受講者から16人が三条市内の商店街で企業した。

また、地元の高校生約70人が「マルシェ部」として運営の手伝いに参加。運営する大人たちと地域貢献を通じてつながりができるようになった。大学がない為、高校卒業後の若年層の流出が避けられない三条市にとって、若者の引き留め策としても注目される。

そのためマルシェの今後の目標は「持続可能にしていくこと。拡大路線はとらない」(国定勇人・三条市長)という。これまでのように安全への配慮を欠かさず、出店も地元を優先する方針だ。財源の大半を占める市からの助成金を段階的に減らし、自主財源化を目指す考えだ。(新潟支局 武藤邦雄)

 

2014年 6月 8日 日経MJ