特集

VIVA! ハルサー ハルサーは畑で働く人の方言名です。

楽しく元気な沖縄の農家さんをたずねて巡るVIVA!!ハルサー皆さんに代わっていろんな話をあれこれ聞いちゃいます。

今回のハルサーさん紹介 Vol.12

久米島町 山里昌明さん
久米島町 山里昌明さん
基本情報
名前 山里昌明さん
場所 久米島町
作物 紅芋
農家歴 10年

2013年4月、久米島で紅芋などの天敵である害虫「アリモドキゾウムシ」の根絶が宣言されました。久米島でのアリモドキゾウムシの根絶にかかった年月は約19年で、世界的にも偉業と称えられる達成でした。

アリモドキゾウムシは、熱帯、亜熱帯を中心に広く生息しており、日本ではトカラ列島以南の南西諸島および小笠原諸

島に生息しています。アリモドキゾウムシとイモゾウムシは紅芋などに寄生し実を食べ、大きな被害をもたらすため、植物防疫法によって寄生する農産物の移動には規制がかかります。アリモドキゾウムシやイモゾウムシがいる地域から、いない地域へは紅芋などの出荷ができないのです。そのため現在、沖縄本島から県外への生の紅芋の出荷はできないことになっています。

アリモドキゾウムシ

世界的な「アリモドキゾウムシの根絶」達成

アリモドキゾウムシの根絶プロジェクトが1994年にスタートし、その最初の根絶地域として久米島町が選ばれたのです。

久米島町役場の前里良正さんによると、久米島町のアリモドキゾウムシ根絶事業は、久米島町、沖縄県、研究者、生産者などさまざまな分野の連携によって進められたとお話してくれました。久米島町での根絶方法は、放射線をあてて不妊化したアリモドキゾウムシを大量に放つ「不妊虫放飼法」といい、野生のアリモドキゾウムシと交尾しても繁殖せず、野生同士が交尾する機会を奪って根絶に至る方法。この方法で1999年から累計4億6000万匹もの不妊虫を放し、根絶へと繋げたと言います。

とれたての「紅芋」
とれたての「紅芋」

紅芋のレシピ

紅芋クレープミルフィーユ

紅芋クレープミルフィーユ
紅芋とフランボワーズソースの酸味が合う!
材料
<クレープ生地>
全卵 90g
砂糖 100g
少々
牛乳 125g
生クリーム 75g
薄力粉 100g
焦がしバター 75g
紅芋ペースト 30g
75g
<紅芋チップ:付け合せ>
紅芋(1mmにスライス) 1/2本
<紅芋クリーム>
紅芋ペースト 30g
生クリーム 300g
砂糖 20g
<紅芋ペースト>
紅芋(ボイルして裏ごしする) 1kg
バター 30g
紅芋ペースト 30g
上白糖 130g
生クリ-ム(牛乳でも可) 150g
<カスタードクリーム>
卵黄 3個
砂糖 50g
薄力粉 25g
牛乳 250cc
無塩バタ- 25g

つくり方はこちら

紅芋ごはん

紅芋ごはん
コロコロかわいいむらさきおにぎり
材料 4 人分
紅芋 50g
温かいごはん 200g
小さじ1/2
黒ゴマ 少々

つくり方はこちら

紅芋のレシピを見る

ハルサーさんにインタビュー!

久米島町で紅芋の栽培が始まったのはいつ頃からですか

アリモドキゾウムシ根絶プロジェクトは十数年前にさかのぼりますが、紅芋はそれよりもずっと前から久米島町で育てられていました。

久米島の紅芋農家の山里明昌さん、西平守さんによると、久米島で紅芋が育てられたのは明治時代にさかのぼるのではとお話してくれました。廃藩置県が行われ、さまざまな社会的変革の中で首里の士族が寄留民として久米島町に移り住んだといわれています。その際、さとうきびとともに紅芋が久米島町にも持ち込まれ育てられるようになったという一説があるそうです。当時の久米島は未開墾の地域が多く、西平さんの畑がある大原地区も寄留してきた士族が土地を切り開いっていったといいます。大原地区には「草分けの碑」という碑が建立され、当時の寄留民の苦労が称えられています。

紅芋農家の内間幸秀さんら
どのような種類の紅芋を育てているのですか

久米島町ではさまざまな紅芋が栽培されています。見せてもらったのは、皮が白く身が紫色の「備瀬(びせ)」や、皮も身も紫色の「美ら恋紅(ちゅらこいべに)」、皮は紫色、身は白色の「カンタ」です。他にもハワイから久米島にはいってきた「ハワイ紅(はわいべに)」や「沖夢紫(おきゆめむらさき)」などもあるのだそうです。久米島で紅芋が育てられ始めた当初は、備瀬やハワイ紅といったものが主流でしたが、現在は加工しやすく収穫量が多い「美ら恋紅」の生産が盛んなのだそうです。久米島町産の「美ら恋紅」は加工されお菓子になり、代表的な沖縄土産として県内外に親しまれています。

「沖夢紫(おきゆめむらさき)」
今後の目標を教えてください。

紅芋農家の山里さんは「美ら恋紅などの加工用の紅芋とともに、今後は焼き芋などそのまま食べる品種の栽培にさらに力を入れていきたい」と言います。久米島町内の紅芋農家さんと協力し、品質のいい紅芋を一年中出荷していきたいと今後のビジョンをお話ししてくれました。「アリモドキゾウムシが根絶されて、私たち生産者ももっと頑張っていかないといけないなと思っているんです。新しい取り組みを進めることで、安心でおいしい久米島の紅芋をもっといろんな人に届けなくちゃね」と話す山里さんに、久米島の紅芋生産の力強い未来を感じました。

南部普及センターで苗を生育

ライター後記

久米島町では新しい取り組みとして紅芋の「バイオ苗」の育成を進めています。バイオ苗は、今まで知られているウイルスにかかっていない苗のことで、ウイルスがいない苗の先端部分を切ってさらに植えかえ、増やしていきます。こうして育てたバイオ苗はウイルスがないので、病気にかかりにくく、収穫量が多く、実の形もきれいになるなど良質の紅芋が育つと期待されています。
このように久米島町では、日々質の良い紅芋を実直に育てている農家の方々と、アリモドキゾウムシ根絶プロジェクトに関わったのべ10万人以上の方々が一丸となって「久米島町の紅芋」を育て、守り、発展させてきました。そして今、バイオ苗の育成も新たに行われるなど、久米島町の紅芋生産は日々前進しています。

「草分けの碑」

取材日:2014.01.15