コラム おいしい沖縄

沖縄といえば豚肉や和牛が有名ですが、魚も結構食べられているという事実は以前書いたとおり。その料理法はマース煮という塩で煮るものや、お刺身や沖縄てんぷらで食べることが多く、焼き魚で食べることはあまりありません。ただし全国的な傾向だと思うのですが、だんだん家で魚料理をすることが少なくなってきて、お刺身やてんぷらはお店で買ってきて食べる。煮物、焼物はお店でという人も多くなっているようです。

そんな魚は好きだけど料理は苦手、という人の強い味方が「海産物レストラン」です。とてもざっくりしたカテゴリーですが、沖縄の海沿いの道を走っていると良く見かける看板です。「海鮮料理」という看板もあります。なぜだか不思議なのが、いずれも看板が大きいということ。たいがい目立つし、見逃すこともなさそうなので、海のもの好きならチェックしてみて損はないお店です。

この手のお店は、近くの漁港で上がった鮮度の高いものを使っているので、お刺身もおすすめなのですが、今回おすすめしたいのは魚を使った汁物。なかでも一押しは、魚好きにじっくり味わってもらいたいアバサー汁です。 アバサー汁は県民に人気の一品。魚の持つうまみがグッと凝縮されていて、その濃厚な味わいは他の追随をゆるしません。アバサーとはハリセンボンのことでふぐの仲間ですが、毒がないので安心して食べることができます。そして味はさすがにふぐの仲間だけあって、一度食べると病み付きになるうまさです。本物のフグ好きにもぜひオススメしたい魚汁です。

もうひとつ、沖縄ならではという料理で、絶対にはずせないメニューといえばイカスミ汁。こちらは一時期流行したイカスミパスタと同じイカの墨袋を使った汁物です。もちろんイカスミ汁はパスタが流行するずっと前からある郷土料理。遠く離れた外国に、イカスミの風味を同じように使った料理があるというのは面白いことです。
沖縄のイカスミ汁は、かつお出汁でイカを煮て汁物にします。そして最後に墨袋のスミを鍋に入れてひと煮立ちさせるシンプルな料理法です。 新鮮なイカを使うと、スミを入れなくても十分美味しいのですが、最後にスミを入れることでイカの風味が2倍にも3倍にも増すのです。黒い汁の中に白いイカが浮いているので、見た目に彩りゆたかとは言えませんが、イカ好きならその風味にノックアウトされるはずです。
ただ問題がひとつ。とても美味しいオススメ汁物なのですが、イカスミパスタと同様唇や歯が黒くなるのは避けられません。どんな美人でもその美味しさに、おもわず黒い歯で笑っちゃう、そんなイカスミ汁なのです。

きりんオフィス
福田 芽久美