コラム おいしい沖縄
ご存知ディープな沖縄、食堂メニューは健在です
沖縄の大衆食堂には、ディープな、そして実に沖縄らしい沖縄がぎっしり詰まっています。
初めて入る他県の人は軽いカルチャーショックを受けるということもあるようです。しかし沖縄大好きビギナーさんに沖縄スピリットを味わってもらうためにも、是非オススメしたいスポットなのです。
とはいえ、外観も含め本土の大衆食堂と内部はあまり変わりません。店の隅にはヨレヨレになった今日の新聞。カラーボックスにはやや古い漫画雑誌が何冊か。そして壁には一面にメニューが貼られている...、というよくある感じです。
ではどこがディープなのかというと、壁一面に貼られているメニューの内容なのです。このたくさんのメニューの中に、実に「おきなわ~」なエッセンスを見ることができるのです。
今まで沖縄そば屋とか、レストランとか、カフェとかしか行ってなかった沖縄大好きビギナーさんは、ここでメニューを見て戸惑いをかくせないかもしれません。なぜならそこには「ゴーヤーチャンプルー」や「沖縄そば」と並んで、「みそ汁」「ポーク卵」「チャンポン」「煮付け」など、「???」なメニューが並んでいるからです。
福田 芽久美
ここで有名な沖縄食堂のネタ話をひとつ。
観光客が食堂に入って「みそ汁」と「ごはん」を頼んだら、しばらくして出てきたみそ汁にはご飯が2膳。沖縄ではご飯は2膳セットなのかと驚いたというお話。
実は食堂の「みそ汁」というメニュー、お味噌汁とご飯というセットメニューなのです。なのでセット物に追加でご飯を注文した形になったという次第。
「みそ汁」って、こんなのがわざわざ食堂のメニューになるなんて考えられないとお思いでしょうが、これぞ沖縄食堂の定番中の定番。具だくさんの「みそ汁」は、大抵そば用のどんぶりに入ってきてあふれんばかり。男性でもがっつり食べ応えがあります。
具はそのお店や日によってさまざま。この「具を決めてない」ってところが実にウチナーっぽいのです。具のメインは野菜や島豆腐が多いのですが、なんの疑問もなくポークランチョンミートが入ってたりするのもウチナーっぽいところです。
「ポーク卵」というメニューは、そのポークランチョンミートが主役のメニューです。この愛すべき一品は家庭でもよく作られています。
県内では単にポークと呼ばれるポークランチョンミートを、7、8ミリくらいの厚さに切ってフライパンで焼き、卵を炒り卵か目玉焼きにして添えて出すという、これまた料理とは言えないんじゃないかというお手軽メニューです。
大抵はキャベツなどのサラダが付いてますが、主役はそのまんまポークと卵の2品。飾りのない直球勝負のメニューです。県民のポークへの愛がわかる一品です。
そして他県民の衝撃が大きいメニューが「チャンポン」。最近全国的にも知られるようになりましたが、沖縄のチャンポンは麺ではありません。長崎チャンポンだと思って注文すると驚くことになります。
沖縄食堂の「チャンポン」は、簡単にいうとご飯の上に卵でとじた野菜炒めが乗っている感じです。で、これがまた食堂によってさまざまなテイストがあるのです。野菜が乗ってるという基本さえ押さえれば、ニンニクが入っていたり、ソーセージが入っていたり、あんかけ風になっていたり、ルール無用の代表格のようなメニューです。
お店の数だけチャンポンがあるといっても過言ではありません。ちなみに「チャンポン」はスプーンで食べます。
そしてメニューの大胆さで横綱クラスを行くのが「煮付け」です。このドカンとした書き方には、ある種のいさぎ良ささえ感じてしまいます。何の煮つけという説明が一切ありません。「何の煮つけ?」と聞くことすらはばかられるような...。そんな大胆な「煮付け」メニューです。
入っているものは大根、人参、豚肉、結び昆布などなど。人参が島人参になったり、大根の代わりに冬瓜だったり、ほうれん草や島菜が入っていたり、厚揚げ豆腐が入っていたりするのはお店によって違います。ちなみにテビチが入っていると、これだけは「テビチの煮付け」とチャンと書いてあります。なんだか格が違うのさ、という感じでもあります。
と、ここまで読んだ方ならもうお分かりでしょう。とにかく沖縄大衆食堂のメニューはアバウト、テーゲーなのが多いのです。目の前に運ばれてくるまで、どんな物がでてくるのかわからず、ワクワク、ドキドキなのです。
誤解のないように言っておきますと、メニューの書き方はテーゲーですが、味はアンマー達が腕によりをかけた一級品です。
沖縄大衆食堂は、沖縄の懐の深さを示すおいしいスポットなのです。
2011/05/24