コラム おいしい沖縄
そばじょーぐーが生まれるわけ
そばじょーぐー。沖縄には自他共にみとめる「そばじょーぐー」がかなりいます。
「そばじょーぐー」とは、沖縄そばが大好きな人。つまり酒上戸ではなくって、そば上戸というわけです。そしてそんなじょーぐーさんたちは、有名店を食べ歩き、新しい店をチェックし、友達と情報交換を怠らないという、沖縄そばを満喫する生活をしています。
他に色々おいしい沖縄料理があるにもかかわらず、ゴーヤーチャンプルーじょーぐーや、ラフテーじょーぐーとは言わず、よく言われるのは「そばじょーぐー」です。
身近で誰でも手軽に食べられ、話題にすると盛り上がるのが「沖縄そば」なのです。
スタンダードな沖縄そばは、店によって値段もそんなに違わないし、「あそこがおいしかったよ」と聞けば、「じゃあ食べに行く?」となります。
ファーストフードやファミリーレストランが出来る前、こどものいる家族連れが外食するといえば、沖縄そば屋か食堂でした。部活帰りにちょっと食べるといえばもちろん沖縄そば。公園や海辺へ遊びに行けば、そこにはパーラーの沖縄そばが...。
小さいときから味に親しみ、青春を彩り、日々の生活にフィットしている沖縄ソウルフードが、「沖縄そば」なのです。
そもそも沖縄で麺といえば、まず「沖縄そば」です。本土で麺類というと蕎麦、うどん、ラーメンといろいろ選択肢がありますが、沖縄では圧倒的に沖縄そばです。
それは店舗数にも現れていて、日本蕎麦やうどんを食べさせる専門店は県内に数えるほどしかありません。ラーメンブームのおかげで、県内でも以前よりはラーメン店が増えましたが、それでも沖縄そばの店舗数にははるかに及びません。
その上沖縄そばは専門店だけでなく、食堂、レストラン、パーラー、喫茶店、カフェ、ホテルなど実にさまざまな場所のメニューにもちゃっかり載っているのです。沖縄そばが食べられる店というと実際何店舗になるのか想像がつきません。それだけ県内にはそば好きが多いとも言えます。
多くの人に愛され、広く沖縄県内で食べられる沖縄そばですが、実はそれほど歴史が古いわけではなく、一般的になったのは戦後のようです。
沖縄そばの系統は大きく3つあって、本島、宮古、八重山でそれぞれ特徴があります。
本島の那覇あたりで食べられていたのは、平たいやや縮れた麺と豚かかつおの出汁、三枚肉にかまぼこ、そして紅生姜と刻み青ネギという組み合わせ。本島北部になるとやや幅広の麺が多くなります。
宮古地方のそばは宮古そばと言われ、平たい細めんが主流です。以前は具を上ではなく麺の中に入れていたのが特徴でしたが、最近はそのスタイルも少なくなったようです。
八重山地方のそばは八重山そばと言われ、こちらは丸い細麺が特徴。さらに具も豚肉とかまぼこを刻んでいためたものが乗っているので、ぱっと見た目でも違いがすぐにわかります。
「宮古そば」や「八重山そば」と銘打って出しているそば屋は、このような特徴を引き継いでいますが、最近はその店オリジナルの「沖縄そば」を出すところが増えてきました。
以前は製麺所にまかせていた麺も、各店舗でこまかく指示をだしたり手打ち麺にしたり、工夫が凝らされています。具のバリエーションはもっと豊富で、日々進化をとげています。
今では一般的になっているソーキそばも、実は以前は無かったもので、進化したバージョンなのです。野菜や中身やゆし豆腐なども進化したバージョンで、それぞれ定着しています。
新しいところではトマトやカレー、タコスの具を載せたものまであって、沖縄そばの進化はとどまるところを知らないようです。
シンプルかつバラエティに富んでいて、進化しつづける沖縄そば。
これはソウルフードであるとともに、探求するのに十分な条件をもっているようです。
そばじょーぐーが生まれるわけは、ここにあるのかもしれません。
福田 芽久美
2011/03/15