コラム おいしい沖縄
ポークは豚肉じゃないんです
ポークとは英語で豚肉のことですが、そう一筋縄ではいかないのが沖縄事情。県民の生活にかかせない、外せないポークとは、ご存知ポークランチョンミートのことです。
日本の他の地域では、まったくと言っていいほど見かけないこの缶詰。戦後アメリカ軍が沖縄に持ち込んで、今ではすっかり県民生活の一部として定着しています。
もともと豚肉を食べる文化があった沖縄ですが、戦争の影響で豚がほとんどいなくなった上、残りの豚も病気で壊滅状態に。そこに登場したのがポーク缶詰だったのです。
そんな経緯もあって、すんなり沖縄にとけこんだポーク缶詰ですが、今では家庭料理の最強の助っ人となっています。ゴーヤーチャンプルーやフーチャンプルーなどのチャンプルー系では常連。パンやバンズにはさんでサンドイッチ。ホワイトシチューやチャーハンの具。ポークの代表料理、卵と一緒に「ポーク卵」。おにぎりの具、油みその具、そしてなんとお味噌汁の具まで。こんなに愛されている缶詰はなかなか見当たりません。一時は健康志向から、その塩分や油分の高さが敬遠されたこともあったのですが、最近は減塩タイプのものが新たに開発され人気が衰えることはありません。
アメリカ統治時代の影響で、ポークと同じように生活に溶け込んでいるアメリカ食材はまだまだたくさんあります。そのひとつがツナ缶詰。どこの家にもストックがあるくらい県内では馴染まれています。
ツナは、ソーミンタシヤーやにんじんシリシリ、ヒラヤーチーなど、こちらも台所の万能選手。ちなみにおばぁはツナ缶詰のことを「トゥーナー」って発音します。耳でアメリカ人から聞いた発音で、おばぁが言うとちょっと可愛らしかったりします。
缶詰類は保存がきくからか多くの輸入品が出回っていて、シチュー、コンビーフ、スープ、フルーツなど、どこのスーパーに行っても手に入ります。輸入マーガリンや輸入マヨネーズなど、いまだに根強いファンがいる商品もあり、お菓子や炭酸飲料も、国産品と同じように普通に輸入品が売られています。
食材だけでなく、食文化も当然アメリカ文化の影響を強く受けています。2006年の調査ではケンタッキーフライドチキンの消費量が個人あたり全国1位だったとか。フライドチキンをはじめステーキ、タコス、ピザなど、本土で一般的になる前から県民生活に溶け込んできました。
このように洋食文化がすっかり浸透した沖縄ですが、伝統的な食生活がなくなったわけではありません。庶民の食卓には昔からの沖縄料理がならび、行事のたびに伝統的な料理が作られています。近年スローフードや健康食が注目をあつめるにつれ、伝統的な沖縄食文化が改めて見なおされています。
沖縄の文化はチャンプルー文化だとよく言われますが、さまざまな食材をうまく使い分けながら、沖縄らしさを失わないのが現代沖縄料理といえるでしょう。
福田 芽久美
2011/03/15