コラム おいしい沖縄
沖縄でだけ?!ジャーマンケーキの謎
沖縄には不思議なケーキがあります。それは形が変わっているわけでも、素材が変わっているわけでもなく、作り方がユニークというものでもありません。
では何が不思議なのか?というと、沖縄でだけ作られているケーキなのです。そのうえほとんどの県民は、「他県では作られていない」という事実を知らない、というおまけつきです。
その不思議なケーキの名前は、「ジャーマンケーキ」。
それはいったいどんなケーキかというと...。見た目は普通の洋風ケーキ。チョコレートのスポンジが2段か3段になっていて、間にクリームがはさまれています。
そしてケーキの上には甘いココナッツがたっぷりのっているのです。沖縄ではあちこちのケーキ店で普通に販売されています。
ココナッツが好きな人にはたまらないこのケーキ。他県でも売れると思うのですが、なぜか他県では作られていないのです。ということは他県から伝わったものではなく、沖縄が発祥の地なのかという疑問がわきます。
そして「ジャーマンケーキ」という名前。名前からするとドイツのケーキなのでしょうか? ところがドイツのお菓子レシピを探してみても、それらしいものを発見できないのです。
ジャーマンケーキを最初に発売したのはどこなのか? 色々調べてみた結果、県内でも老舗の洋菓子店「洋菓子のジミー」に行き当たりました。
ジミーでは1970年ごろ、基地内で働いた経験のある従業員がいて、基地内で人気にあるケーキということで作り始めたようです。
ジミーのジャーマンケーキは、今でも年間18000個ほど販売される人気のあるスタンダード商品ということです。
つまりジャーマンケーキは、アメリカのケーキだったわけです。ではアメリカのケーキなのに、なぜジャーマンケーキというのか?という疑問が残ります。
基地内ではジャーマンチョコレートケーキと呼ばれていたこのケーキ、実はジャーマンとは国の名前ではなく人の名前なのだそうです。
1852年にイギリス人のサム・ジャーマンという人が、アメリカのベーカーチョコレート社のためにダークチョコレートを開発し、ベーカー社は記念にジャーマンチョコレートというブランド名で発売を開始したというのが物語のはじまりです。
そのジャーマンチョコレートを使って1957年にテキサスの主婦が地方新聞にチョコレートケーキのレシピを投稿しました。
それが今日「ジャーマンケーキ」といわれるケーキの元になったようです。
ジャーマンケーキはココナッツがたっぷり乗っているので、好きな人は好きだけど、ココナッツが苦手な人には敬遠されるようです。
ただし生クリームたっぷりの洋菓子ではないので、案外年配の方に好まれているという話もあります。
以前はどこでも見かけたジャーマンケーキですが、最近はケーキ店が専門的になって、以前より目にする機会が少なくなったのは残念なところです。
沖縄の歴史を感じる洋菓子のジャーマンケーキ。どうぞ一度お召し上がりください。
福田 芽久美
2011/05/17