コラム おいしい沖縄
野菜の名前で、プチバトル!?
ハイタイ!島ナイチャー嫁のイハヨシコです。皆さん、生まれた地域と違う県や国に引越しされたことはありますか?私は残念ながら以前イタリア移住を考えたことだけはありますが、国外はなく国内では2回大きな引越しをしています。東京で生まれ育って、最初は20代後半に名古屋へ転居、そこで10年余り生活して、そして今の沖縄。
一番初めのコラムでも書いたことですが、引越して一番困ったことでもあり、同時にいつも面白いなーと思うことは、やっぱり「言葉」ですね。名古屋の時も「どえりゃー」とか「でら」とか「えらいねー」なんて話されて「???」でした(特に三河出身の友人と話すと面白くってワクワクしながらいろんな言葉を教えてもらいました!今でも名古屋弁のイントネーションとか言葉遣いがひょこっと出ることがあります)。でもまだまだ名古屋は日本語の標準語が普通なので生活に支障は全くなし。沖縄も日本なので支障はないと言えばないのですが、名前や漢字、ご年配のウチナーンチュと話すと今でもやっぱり一度は「えっ?」て聞きなおしてしまいます。ウチナーグチ、すなわち琉球語(もしくは琉球方言)の言語説には、いろいろあるみたいで、日本語とは別の言語(独立言語)と考える場合、日本語の中の一つの方言としてみる場合に分かれているようです。ただし独立言語だとしても日本語と系統は同じという考え方が有力だそうです。そう思うと海外移住されて全く違う言葉を話さなければならない方々にとって私のボヤキなんてかわいいものですよね~(すみません)。下手なイントネーションで偽ウチナーグチを話そうと必死な私に対して、しっかりウチナーンチュの私の娘は、足をテーブルの角にぶつけた時は「アガーッ!」ととっさにでますし(「アガー」は「痛い)という意味)、何やら私にもわからないウチナーグチを幼稚園のお友達から習ってきて普通に使っています。そんな娘の様子を微笑ましく見ているのが、じぃーじ(義父)。義父にはいつも新しいウチナーグチを指南してもらっていますが、覚えが悪く全く上達しない私と違って、孫のナチュラルなウチナーグチはかわいいんだろうな、と思います。そんな義父と私の共通の話題は野菜や果物のことなので、その点は盛り上がったりするのですが、これがまたややこしい会話になったりするのです。(ちょっとしたバトルも起ったりもします<笑>)。
野菜の名前は本土でも地域によって異なることがよくありますよね、沖縄ももちろんそうで、「冬瓜」は「シブイ」、「苦瓜」は「ゴーヤー」、「大根」は「デークニ」、「人参」は赤い大根みたいだから「チデークニ」、「水前寺菜」は「ハンダマ」などなど、今でこそ私も普通に使うようになりましたが、最初は「???」で一生懸命覚えてきました。中でも今も忘れられないのは、野菜の名前についての義父とのプチバトル。それは「ウンチェー(またはウンチェーバー)という葉野菜。ウンチェーは沖縄の夏の葉野菜の定番中の定番。避暑地のような高原地帯がない暑い沖縄では夏は葉野菜が皆無に近い状態ですが、このウンチェーはシマナー(高菜)、カンダバー(八重山カズラ)などとともに沖縄では夏の貴重な葉物なのです。鉄分やカルシウムが豊富で、ニンニク、醤油、オイスターソースなどでしっかり味付けした油炒めはビールにも白いごはんにもピッタリ!ほんと美味しいですよね。だいぶ前になりますが、このウンチェーの炒め物が食卓に登場した時のこと。「これは知ってるか?」と義父、もちろん知ってますよ!茎の中心が空洞、中華料理で青菜炒めといえばコレ!と得意気に「クウシンサイ(空心菜)ですよね!」とにこやかに答えると「いや、これはウンチェーだよ」、「えっ?これクウシンサイって言いますよね?」「いや、ウンチェー。クウシンサイなんて聞いたことがない」「えっ?これ本土ではクウシンサイとも言ってますけど...」なんていう会話がぐるぐる。火花こそでないものの、ハルサー(畑人:畑で働く人、農家の人という意味。ちなみに漁師は海人と書いて「ウミンチュ」)の義父も、食にこだわりを持っていた私もお互いに引くに引けなくなって、ウヤムヤにしながらその日の食卓の会話は終わったような気がします。今になって思えば嫁なんだから義父を立ててサラッと流せば良かったなーと反省しています(この辺がダメ嫁なんですよねー)。最近は清貧の思想を地で行く謹厳実直で心優しい義父をとても尊敬しているので、こんなことは滅多にありません。(ってことはまだあるってこと!?でもないです...笑)
今だからこれも笑い話ですが、このウンチェー、実は本当にいろんな呼び方があるんです。さらにこれは原産地でもある中国と大いに関係があります。日本ではヒルガオ科サツマイモ属、標準和名は「ヨウサイ」。その他「クウシンサイ」「エンサイ」「アサガオナ」、沖縄では「ウンチェー」「ウンチェーバー」(「エンサイ」もよく使います)と呼んでいます。朝顔のような花を咲かせることからついた「アサガオナ」以外、ほとんどが中国の名前や呼び方から由来しているものばかりです。「ヨウサイ」は中国で「蕹菜」と書くのでそれを日本語的に音読みしたもの。「エンサイ」と沖縄の「ウンチェー」はこの「蕹菜」の中国語読み「ウォンツァイ」「ウェンツァイ」から(微妙な発音なので表現も難しいです。合っているかしら?)。「ウンチェーバー」の「バー」は葉の意味。また中国では「空心菜(コンシンツァイ)」や「通菜(トンツァイ)」とも呼ばれているようで「クウシンサイ」はそれを音読みしたもの。中国では他に俗名もあるそうです。熱帯アジアも原産地ですから、フィリピンやインドネシア、タイなどの呼び名がもし日本に伝わっていたら「???」、もう何が何だかわからなくなりそうですね。とにかく多彩な呼び名があるみんなから愛されている野菜です。
イハヨシコ
2012/09/18