コラム おいしい沖縄
タワシを食べるウチナーンチュ!?
ハイタイ!島ナイチャー嫁のイハヨシコです。夏の我が家の手抜き料理といえば、ゴーヤーチャンプルーとカレーライスといったところでしょうか。特に辛党の私たち夫婦(毎週2~3回激辛タイ料理を食べ過ぎて胃腸を壊した経験がある私&普通の唐辛子より数倍辛い島唐辛子の一味を何にでもかけて食べてしまう若ダンナ)の食卓へのカレーライス出現頻度は、非常に高いです。しかしそのカレー、一般的なカレーとはちょっと違うんです。カレーなら東京と沖縄、そう大きく変わらないんじゃないかと思いますよね。はい、私もそう思っていました。だってカレーといえば、ジャガイモ、ニンジン、玉ネギ、お肉が一般的な具材。しかし若ダンナの家庭では、ナーベラー(またはナーベーラー)を入れるんです。ナーベラーとは、沖縄で「ヘチマ」のこと。
「エェ~~~!!ヘチマを食べるの?」
今では大好物となったナーベラー・カレーですが、最初の衝撃は今でも忘れることはできません。だってヘチマはタワシ、もしくは化粧水、というイメージしかなかったのですから。ヘチマって食べられるの?という懐疑心は、本当にひと口食べるまで消えませんでした。もちろん下ごしらえの仕方もわからなかったため、最初は若ダンナにお手本を依頼。まず玉ネギとひと口大のベーコンを炒めて、そのあとピーラーで皮剥きした1cm弱の厚切りナーベラーを鍋に投入、そしてすぐフタをして蒸し煮にします。「え?焦げないの?お水入れないの?」と思いきや、あれよあれよとナーベラーから水分が...。ナーベラーは90%以上が水分なのでお水は少しだけ足して、後はルーを溶かせば、ハイ!出来上がり。作り方は至ってシンプルなのでこんな私でも即習得。蒸し煮にしている時はちょっと青臭さが気になりましたが、食べてみるとあまり気にならず、トロトロのなめらかな食感とまろやかな甘味がベーコンの塩味とベストマッチ。種もそのまま食べられて「おいしい~!」。
沖縄では「ンブシー」といった味噌煮にする伝統料理が定番ですが、シチューや汁物、炒め物にも最適(余談ですが、ウチナーグチでは「ン」から始まる言葉があるんですよ。だからシリトリは永遠に終わらないのです。不思議だぁ)。水分が多く、ビタミンやカリウムなどミネラルを豊富に含んでいるため、利尿作用や美容効果があります。こうした夏のヌチグスイとしての役割、収穫量の多さから、ナーベラーはゴーヤーと並び沖縄の夏野菜の代表格となっています。また沖縄では繊維があまり多くできない品種を若い実の内に収穫して食用にします。だから本土のヘチマとは少し違うようですので調理をする時には確認してくださいね。(一度大きく成長したナーベラーを調理したら、繊維ゴワゴワの"タワシ・カレー"になってしまって失敗。選ぶ時のポイントは、太すぎず鮮やかな緑色のものがgood!)
さて最後に、ヘチマは昔から繊維がとれるため別名糸瓜と呼ばれています。それが後に「とうり」となまり、「と」は『いろは歌』で「へ」と「ち」の間にあることから「へちま」と呼ばれるようになったようです。ではナーベラーは? それは、ヘチマの繊維をタワシにしてナービ(鍋)を洗っていたことから「ナービアラヤー(=鍋洗い)」と呼んでいたものが変化したと言われています。どちらにしても最後はタワシという運命ですが、食べてヘルシー、使ってエコロジーな野菜として、ゴーヤーとともに沖縄発のメジャー食材になりそうな予感がします。
イハヨシコ
2012/06/11