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2014年7月

古民家宿泊施設増加へ

徳島・三好市 田舎暮らしを体感

滞在型観光 集客力を強化

【徳島】徳島県三好市は東祖谷地区で、古民家を活用した宿泊施設を増やす。従来3棟で観光客を受入れてきたが、来春までに全8棟にする。かやぶき屋根など古民家の雰囲気を楽しみながら、床暖房やオール電化キッチンなど快適な環境で宿泊できる。同地区は山あいに昔ながらの集落が残る風景が観光客の間で人気があり、田舎暮らしを体感できる滞在型観光の集客力を強化する。

 

宿泊施設がある三好市東祖谷地区の落合集落は、2005年に国の重要伝統的建造物群保存地区の指定を受けた。高低差300メートルの急斜面地に江戸時代中期から昭和初期に建てられた古民家が点在。古民家を保存しながら観光資源として活用し、過疎化が進む地域の活性化につなげるのが宿泊施設の狙いだ。

このほど営業を始めた新設の「雲外」「蒼天(そうてん)」の2棟は、ともに定員が5人。面積はそれぞれ85平方メートル、64平方メートル。例えば「雲外」は囲炉裏にある部屋と自炊や食事ができる部屋とで構成されている。5月末に開業した「悠居」の定員は10人で面積は138平方メートル。来年春をめどにさらに2棟を開く。

新しい3棟は従来の3棟と同様、市が古民家を所有者から無償で借り、改修・維持費を負担する。

「蒼天」の場合、改修には約3千万円をかけた。運営も従来の3棟と同様、古民家を再生・保存する活動を手掛けてきた東洋文化研究家のアレックス・カー氏が理事長を努める地元のNPO法人「塵庵(ちりおり)トラスト」に委託する。

宿泊料金は雲外、蒼天で2人利用時の1人当たり料金が1万4千円(繁忙・閑散期以外の通常期)。夕食はオプションで別途料金がかかるが、ソバ打ち体験や集落内のウォーキングなどの体験プログラムも用意する。

歯応えがある小さなジャガイモの「ごうしいも」など地域の食材を使った郷土料理を住民に教わりながら自炊したり、近所の料亭から食事を運んでもらったりもできる。

降雪もある冬場に客が途絶える時期があるため、従来の3棟の13年度稼動率は4割弱の水準。だが春夏秋に人気があるため、宿泊客の受入れ能力を増やす。

三好市は12年に古民家を改修した宿泊施設を開業。13年度の利用者数は1086人。関東・関西からの利用者が半数以上を占めるほか、外国人観光客の人気も高く5.8%を占める。13年度の宿泊売上高は約1千万円。8棟が年間稼動する16年度に宿泊売上高2500万円を目指す。

若者の流出防ぐ青空市

イキイキ 地域

新潟県三条市

県庁所在地の新潟市と県第二の都市である長岡市に挟まれた新潟県三条市の「三条マルシェ」が人気だ。日祝日に中心市街地を歩行者天国にして、出店やキッチンカーを置く青空市は一見ありふれた光景にみえる。だが市民目線の運営は街中に一時のにぎわいを生み出すだけでなく、商店街への新規出店促進や若年層流出を抑える仕組みとしても注目されつつある。

2014年度で5年目の開催となった三条マルシェは5~10月にほぼ毎月、冬には1回開く。13年度は6回開催で、のべ20万8千人が来場した。このうち歩行者天国区間を1.7キロメートルに広げた13年10月の開催には、三条市の全人口に匹敵する9万8千人が集まった。

13年度の総事業費は人権費込みで1300万円。1千万円を市が助成し、300万円は市民ボランティア約40人で構成する実行委員会が出店者から徴収する出店料などでまかなう。

5月6日に開いた今年度最初の三条マルシェは2万7800人が来場した。出店79店舗は市内外の飲食、雑貨などが中心で珍しい店があるわけではない。簡易ステージを設けているが有名人は出ない。出場者希望から10分間の出演で1千円を徴収しているほどだ。

それでも人が集まるのは「ハードルが低く、交流の楽しさを前面に出しているから」と三条マルシェ実行委員長で主婦の加藤はと子さん(39)は話す。加藤さん自身、手芸用品の出店者から実行委員を経て、今年度から実行委員長になった。

 「久しぶり。なんで出ているの」「夫の姉夫婦の店の手伝いでね」_。

会場ではこんな声がちらほらと聞こえる。出店料は4千~6千円と個人でも気軽に出せる。キッチンカーで売る。プロだけでなく、腕試しを兼ねて手作り雑貨を出店する主婦や地元高校生など多様な人がくることで「にわか同窓会」を含め思いがけない交流を生む。

当日、店を開く商店街の店舗前には出店しないというルールがあり、店舗側もにぎわいが生まれることはプラスだ。同時に、マルシェは新規出店希望者が自らを試す場にもなっている。

三条市が商店街の空き店舗対策事業として12年度から始めた「創業塾ポンテキア」。資金繰りなど新規事業開発に必要なノウハウを教えるだけでなく、三条マルシェへの出店を通じた実地での市場調査を最終課題としている。同塾からは2年間で、のべ64人の受講者から16人が三条市内の商店街で企業した。

また、地元の高校生約70人が「マルシェ部」として運営の手伝いに参加。運営する大人たちと地域貢献を通じてつながりができるようになった。大学がない為、高校卒業後の若年層の流出が避けられない三条市にとって、若者の引き留め策としても注目される。

そのためマルシェの今後の目標は「持続可能にしていくこと。拡大路線はとらない」(国定勇人・三条市長)という。これまでのように安全への配慮を欠かさず、出店も地元を優先する方針だ。財源の大半を占める市からの助成金を段階的に減らし、自主財源化を目指す考えだ。(新潟支局 武藤邦雄)

 

2014年 6月 8日 日経MJ